ケンテックス創業者が語る 『クラフツマン』の絶対条件

日本人の繊細な感性に合った
クオリティの高さを徹底追求

 「機能とディテールにこだわり、長く愛用される時計を作りたいと思いました」と、『ケンテックス』の原点を語るのは、根強い人気を誇る日本の時計ブランド、ケンテックス創業者の橋本憲治氏だ。少し彼のプロフィールを紹介しよう。1965年に第二精工舎(現セイコーインスツル)に就職した彼は、高校、大学を通じて学んだ理工系の知識を生かし、時計の外装技術の部門でキャリアを積む。その橋本氏に転機が訪れたのは1983年のこと。香港への赴任だった。折からの円高の進行にともない、外装製造における香港の重要性が増していた時代だった。「技術畑一筋だった私にとって香港での経験、とくに文化の違いやビジネス感覚はたいへん新鮮であり、多くのことを学びました」と当時を振り返る。ある意味、技術屋からビジネスのトップマネジメントへの開眼だった。1988年に帰国した彼は、自らの夢に挑戦することを決心する。会社を退職すると、再び香港に戻り、1989年、Kentex Time社を設立。確たるクライアントも商売相手もいなかったが、明確な“意志”と人一倍の“情熱”を胸に秘め、香港のパートナーと2人だけでスタートを切った。

   当初のビジネスは、一流ブランドの時計のOEM製造だった。が、さらなる展望を目指すことになる。それはこれまで培った知識と経験を活かし、自らの時計ブランドを立ち上げることだ。1994年に株式会社ケンテックスジャパンを設立して準備を進め、1998年、スイスのバーゼル・フェアに初出展し、ついに自社ブランド『ケンテックス』を発表した。「技術屋魂のこだわりといいますか、とにかくいい時計を作りたいという気持ちでした。日本人の繊細な感性に合ったクオリティの高さを追求し、何よりもそれを適正価格で提供することを基本コンセプトにしたのです」

 2001年には陸・海・空の3つの異なるスポーツシーンで最適なパフォーマンスを発揮できる3つの新シリーズを発表し、さらに2005年には日本で唯一防衛省から正式認可を受けて製作した自衛隊モデル『JSDFシリーズ』を製作するなど、“ケンテックス”は軌道に乗っていく。そしていよいよ2007年に発表した『クラフツマン』シリーズに到達するわけだ。

「これまで蓄積してきた技術的ノウハウ、機能、デザイン性を集約した究極の実用時計を目指しました。具体的には、傷が付きにくい特殊なコーティングを施したチタンケースやセラミックベゼルを採用し、針とインデックスには視認性の高いトリチウム発光システムを装備。さらに8つの特殊なゴム緩衝材を充填してムーブメントを保護する強化耐衝撃構造、軟鉄性インナーケースを内蔵した強化耐磁構造━━これらは“クラフツマン”であることの絶対条件となっています。まあ言ってみれば、私の夢の実現でもありますが、まさにスイス製に勝るとも劣らないプレステージ スポーツウォッチであると自負しています」

Kenji HASHIMOTO
橋本憲治

1947年、栃木県生まれ。1965年に第二精工舎(現セイコーインスツル)に就職し、時計の外装技術部門でキャリアを積む。1989年、退職し香港にKentex Time社を設立。1994年、ケンテックスジャパンを設立。1998年に自社ブランド『ケンテックス』を立ち上げ、現在に至る。

『クラフツマン』シリーズの基本スペック

チタンケース

軽量で強靭という最高の実用性を備えたチタンにナノブライトプロテクションという独自の超硬質表面処理を施し、さらにPVDプラチナコーティングすることで、耐傷性、耐摩耗性を向上させて、美しさを長くキープ。

トリチウム発光システム

12時位置のインデックスと針にスイスMBマイクロテック社の純正トリチウムマイクロカプセルを配置。その発光機能は20年以上持続するといわれており、いかなる暗闇でも光が弱まることなく、視認性を維持する。

強化耐衝撃構造

ケース内のムーブメントの周りに、樽型のゴム緩衝材を8個装填する強化耐衝撃構造を採用。振動や衝撃によってダメージを受け、精度不良を起こしやすい繊細なムーブメントを強力に保護する安全設計となっている。

強化耐磁構造

ケース内に軟鉄製インナーケースを内蔵し、文字盤にも軟鉄板を重層した本格強化耐磁構造。80,000A/m(クロノグラフ)、64,000A/m(3針)の超耐磁性能を装備し、強力な磁場環境でもムーブメントを安定した状態に保つ。