H.モーザーの覚醒 03  PIONEER/パイオニア

果敢な起業家精神によって
新たな境地を切り拓く

  19世紀の偉大な時計師であり起業家だったハインリッヒ・モーザー。彼が辿った足跡を3つのテーマに分け、「エンデバー」(真摯な努力)、「ベンチャー」(冒険者)、「パイオニア」(開拓者)という現在の3つのコレクションに投影させているのがスイス屈指のマニュファクチュール、H.モーザー だ。ル・ロックルで時計師としての研鑽を積んだ後、新天地ロシアで時計ビジネスに挑戦し大成功を収めたハインリッヒ・モーザーが、故郷の町、スイスのシャフハウゼンに帰還したのが1848年のことだった。今回は、ハインリッヒがシャフハウゼンで発揮した旺盛な開拓精神にスポットを当てた。

 シャフハウゼンに戻ったハインリッヒは、時計製造だけに留まらず、意欲的な活動を開始する。それまで辺境の静かな町だったシャフハウゼンに新たな工業を起こし、活性化させてくという創造力にあふれる活動だった。まず1851年、彼はライン川からの運河を完成させ、この水力によって80馬力の出力のタービンを動かすことを可能にしたのだ。この出力が周囲の工場の動力源になったのは言うまでもない。また1853年には町の他の有力者たちと共同事業で、シャフハウゼンのスイス鉄道車両製造工場を設立。その年、シャフハウゼンとヴィンタートゥール(チューリッヒの東北にある町)の間を走る鉄道の共同設立者のひとりとなった。さらに1863年から1864年の冬にかけて、シャフハウゼンのライン川に当時ではスイス最大規模のダムの建設に乗り出している。このダムの完成により将来、近隣の事業者に低価格のエネルギーを供給することを想定した事業だった。1865年、シャフハウゼン・ウォーターワーク・カンパニーを設立され、まさにシャフハウゼンの工業化新時代が始まった。もはやハインリッヒ・モーザーは、時計ビジネスをはるかに超越した存在となっていた。近代化のパイオニアとして活躍した、シャフハウゼン最大の貢献者の名声は、1874年に他界してもなお、今日に至るまでシャフハウゼンの伝説として脈々と語り継がれている。

 ハインリッヒ・モーザーが新境地を切り拓いていった偉大なる精神は、2002年に復興したH.モーザーにも受け継がれている。インターチェンジャブル・エスケープメントやシュトラウマン・ダブルヘアスプリングなど時計史上初となる数々のテクノロジーはまさに開発者精神によって誕生した技術革新だ。さらに2016年に登場した新コレクション「パイオニア」は、伝統に根ざす洗練された正統性と革新的なデザインが融合したモダンで躍動感にあふれたシリーズだ。これまでにない、ラグジュアリーなスポーティタイムピースの未来の可能性を明示したコレクションであり、未踏の地を目指すべきミッションが宿っている。その“パイオニア精神”は、まさにハインリッヒ・モーザーの生涯の最後の時代へのオマージュと言えるだろう。

ハインリッヒ・モーザー
1805年、スイスのシャフハウゼンで、代々時計製造を受け継ぐ一家に生まれる。1820年代から1824年まで家業に加わり伝統的な時計製造技術を学ぶ。その後、ル・ロックルで修業し、1826年に独立。翌年、ロシアのサンクトペテルブルクでの時計事業を立ち上げ、大成功を収める。1848年、シャフハウゼンに帰還し、時計事業に留まらず、生まれ故郷の産業や社会の発展に貢献した。1874年に他界。
ハインリッヒ・モーザーは1851年にライン川からの運河を完成させた。この水力から得た動力を周囲の工場にベルトによって伝達し、産業の近代化の礎となった。
シャフハウゼン近郊の高台に建てられたシャルロッテンフェルズ。ハインリッヒの最初の妻、シャルロッテの名にちなんだ大邸宅だが、彼女はこの完成を見ることなくこの世を去っている。現在はモーザー博物館として利用されている。

 

パイオニア精神にあふれた
モダンで躍動的なケース

パイオニア・パーペチュアル・カレンダーのケースは、H.モーザーのパイオニア精神と冒険心にあふれた創作である。H.モーザーCEOのエドゥアルド・メイラン氏はこう語っている。「パーペチュアル・カレンダーは、疑い無く最も実用的なコンプリケーションです。しかしメカニズムがデリケートゆえ、往々にして化粧箱にしまわれて安全に保管されがちでした。パイオニア・パーペチュアル・カレンダーで私たちが求めたのは、軽量で頑丈な防水ケースで複雑なメカニズムを保護し、地上でも水中でも日常的に使えるモデルを製作するということでした」。まさに実用機能を搭載した超高級スポーツモデルの可能性を追求した革新的なケースと言えるだろう。

革新的なモジュール型ケースは、ブラック DLC コーティングが施されたチタン製の部品が組み合わされており、ケースサイドに独自のモダンな印象を生み出している。

パイオニア・コレクション
PIONEER Collection

創業者ハインリッヒ・モーザーの生涯3番目の時代へのオマージュ。ロシアで財を成したハインリッヒは1848年に故郷のシャフハウゼンに帰ると、水力発電用ダムの建設に尽力するなど地元の発展に貢献した。その大胆さ、現代性、パイオニア精神、冒険心を体現するパイオニア・コレクションは、同社初のスポーツウォッチ。120mの防水性を備えており、ブラックDLCコーティングチタンのインサートが特徴。安心して日常使いができる高級時計として注目を集めている。

パイオニア・センターセコンド
定番コレクションでは初のステンレススチールケースを採用。自社で一貫して設計、開発、製造し、独自の調速機構を装備した新開発の自動巻きムーブメント「HMC200」を搭載。シースルーバックからは大型ローターを備えた、H.モーザー独自のダブルストライプ模様が施されたキャリバーを鑑賞できる。ミステリアスなミッドナイトブルーのフュメダイヤルには、夜光ドットと先端にスーパールミノバを施した針が配されている。120m防水。ケース径42.8㎜。ラバーストラップ。138万円(税抜)。問い合わせ/イースト・ジャパン☎03-3833-9602

 

パイオニア・パーペチュアル・カレンダー
サイドにブラックDLCコーティングチタンをインサートしたモダンで軽量な防水ケースに、パーペチュアル・カレンダー機構を備えた自社製手巻きムーブメント「HMC800」を搭載。スレートグレーフュメダイヤルには時間と月を示す12のインデックス、3時位置にデイト表示、6時位置にスモールセコンド、9時位置にパワーリザーブ表示を備える。120m防水。レッドゴールドケース。シースルーバック。ケース径42.8㎜。アリゲーターストラップ。570万円(税抜)。

 

パイオニア・センターセコンド
レッドゴールドケースにシルバーダイヤルを組み合わせたバージョン。部分的にスケルトン加工されたリーフ型針にはスーパールミノバが施され、スポーティな個性を強調している。120m防水。自動巻き。シースルーバック。ケース径42.8㎜。ラバーストラップ。235万円(税抜)。

 

パイオニア・センターセコンド
スポーティでありながら、レッドゴールドのフュメダイヤルが華やかでゴージャスな雰囲気を醸し出すモデル。ダイヤル外周のフリンジには13個の夜光付きドットを配置。120m防水。自動巻き。レッドゴールドケース。シースルーバック。ケース径42.8㎜。ラバーストラップ。235万円(税抜)。

 

パイオニア・センターセコンド
シックで洗練されたスレートグレーのフュメダイヤルを採用。タングステン製ローターを備え、約3日間のパワーリザーブを誇る自社製自動巻きムーブメント「HMC200」を搭載。120m防水。レッドゴールドケース。シースルーバック。ケース径42.8㎜。ラバーストラップ。235万円(税抜)。

 

パイオニア・パーペチュアル・カレンダー
スポーティなステンレススチールケースを採用した、日常的に使えるコンプリケーション。7日間のパワーリザーブを誇る自社製の手巻きムーブメント「HMC800」を搭載。120m防水。シースルーバック。ケース径42.8㎜。アリゲーターストラップ。470万円(税抜)。