最先端クロックメーカー“レペ”の最新作

ジュール・ヴェルヌの
世界観を独創的に表現

“レペ1839”は175年以上もの間、置時計製造の第一線で活躍してきたメーカーだ。今日、高性能な置時計の製造を専門とするスイス唯一の存在である。とくに最近注目されているコレクションは、独創的な高級時計のコンセプトラボ“MB&F”とのコラボレーションをはじめとするユニークな着想の斬新で高性能なクロックだ。例えば、高さ約40cmの大型ロボット・クロック“バルタザール”やキャタピラーを装備した小型のロボット“バッドシャーマン”、月探検に挑むロケット型の“デスティネーションムーン”など、見る人に夢とロマンを与えるメカニックなクロックを次々と発表し、話題となっている。もちろん、今年もその路線は継承され、バーゼルワールドで画期的な新作が発表された。
「私は、新しいコレクションを開発するうえで、昔見た映画からインスピレーションを得ることがよくあります」と語るのは、レペ1839CEOのアルノー・ニコラス氏だ。そしてやおらブースの天井を指指し「天井から吊り下げられた時計をご覧下さい」と見上げる。
「私はジュール・ヴェルヌの小説が好きで、いくつかの作品が映画になっています。そのなかのひとつ“80日間世界一周”のシーンで、気球に乗った冒険の場面が非常に印象に残っていました。熱気球はゆったりと高い空を移動し、冒険心を刺激するとともに日常生活を忘れて空想にふける時間を与えてくれます。私はその世界観を機械式時計にしようと考えました。もちろんデスクのうえに置いても構いませんが、部屋の空間にゆったりと浮いている時計も悪くないと思いました」
 次に披露してくれた新作は、まさにマシンだった。「映画の話の続きですが、私はウェルズのファンでもあります。彼のSF小説の傑作のひとつ“タイム・マシン”は映画にもなり、私に多くのインスピレーションを与えてくれました。この時計は、まさにそのタイムマシンなのです。もちろん映画の中に登場するマシンをそっくり真似たのではありませんが、両端にプロペラを装備し本体がガラス管によって構成されているイメージは、映画から触発されていることは間違いありません。この時間旅行を可能にした風変わりな機械は、筒型のディスプレー全体が回転することで時刻を表示し、筒型ディスプレーの両端にある2つのプロペラのうちのひとつはムーブメントを巻き上げ、もう一方は時間を調整します。おそらく日本にも、子供の頃、過去や未来への旅に夢をふくらませた経験のある“タイムマシン”ファンがたくさんいると思います。もし今でもその機械を探しているなら、このマシンがお薦めですよ」

L’Epée 1839 CEO
Arnaud NICOLAS
アルノー・ニコラス

科学の修士号を取得した後、欧州宇宙機関(ESA)のプロジェクトに携わる。その後、光ファイバー通信の会社などを経て、スイスの時計製造エンジニアとして経験を積み、2009年に現職に就任。

 

L’Epée 1839/レペ 1839

タイムマシン
映画に登場するタイムマシンからインスパイアされた未来的デザインが印象的なテーブルクロック。ガラス製の筒型のタイムカプセルに立体的なムーブメントが搭載され、2つのディスクで時分を表示する。タイムカプセルの両端にあるプロペラは、一方でムーブメントの巻き上げ、一方で時間調整を行うことが可能。タイムカプセルは安定性のある三脚で固定されている。8日間パワーリザーブ。世界限定50個。高さ22㎝、幅26㎝。
395万円(税抜)。
問い合わせ/ムラキ☎03-3273-0321

ガラス製のタイムカプセルの内部には、2つの回転式メタルシリンダーが収納されており、その中央のインジケーターによって時間を読み取る仕組み。写真の場合だと、11時10分となる。

 

ホットバルーン
ローザンヌにあるデザイン学校の学生と共同で製作した熱気球の機械式クロック。置時計としてだけでなく吊り下げることも可能。時刻調整は、バルーンのバーナー吹き出しバルブの代わりに設置されたホイール状のクラウンで、またムーブメントの巻き上げはバスケット全体を回して行う。吊り下げるためのサスペンションキットが付属。8日間パワーリザーブ。世界限定50個。高さ31㎝、直径17㎝。
275万円(税抜)。

時刻はバルーンのバーナー部分に表示される。炎に似た2か所を指す針が、2つの黒い回転式シリンダーによって表示される時間と分を示す。

 

レペ1839の最新作

レペがMB&Fとコラボで創作した
トランスフォーマー クロック

スイス唯一の高級置時計専門メーカーであるレペは、先鋭的なコンセプト・ウォッチのデザインと小規模生産を行うマイクロエンジニアリング・ラボ“MB&F”とのコラボレーションによる独創的な新作クロック『グラント』を発表した。グラントとは、第二次世界大戦中に運用された米国製の中型戦車(M3中戦車)で、南北戦争で北軍を指揮したグラント将軍にちなんで「グラント戦車」と呼ばれていたことから命名。3連のゴム製走行用キャタピラを備えた『グラント』は、乱雑なデスクの上でもすばやく移動でき、しかも3つの形態に姿を変えられるトランスフォーマークロックだ。平らに横たわった低い姿勢、45度にかがんだ姿勢、90度に上体を起こした姿勢の3つのポジションが可能で、時刻表示を備えたシールドは表示が読み取りやすい角度に調整できる。
『グラント』の使命は、せわしなく時が過ぎ去る現代において、ゆるやかに流れるスローな時間感覚をもたらすことだという。『グラント』はどの角度からも、丹念に磨き上げられた時計機構の全貌と、カチカチと音を立てながら回転する歯車の動きを眺めることができる。主ゼンマイが規則正しく作動する様子や、ドーム型ガラスの中で正確に時を刻むレギュレーターの等時間間隔の振動は、時間を普段とは違う姿に変えてくれる効果があり、眺めているだけでもストレス解消になりそうだ。

レペ 1839
L’EPÉE 1839
グラント

3つのポジションに形を変えて楽しめるロボットクロック。搭載されているのは8日間パワーリザーブを備えた自社製直列ムーブメントで、コート・ド・ジュネーブ装飾や面取りなど、最高級腕時計と同様の洗練された仕上げが施されている。上部のドーム型ミネラルガラスの内部には、ムーブメントの調速機構を収納。インカブロック耐震装置を装備し、グラントが移動したり形を変えたりする際に損傷するリスクを最小限に抑えている。右腕の着脱式のグレネードランチャーを本体から取り外すと、時計機構の巻き上げおよび時刻合わせ用のキーとしても使用できる。世界限定50個。台車部分:高さ115×幅212×長さ231㎜。ロボット:高さ166×幅212×奥行き238㎜。
320万円(税抜)。
問い合わせ/ムラキ☎03-3273-0321

 

上体をまっすぐ起こして座ったポジションでは、シールドは垂直方向に配される。見る人よりもグラントが低い位置にある場合は、シールドが平らな状態のほうが時刻を読み取りやすい。

 

L’Epée 1839 ブランドストーリー
L’Epéeは175年以上、高性能な高級置時計製造の第一線で活躍してきた、スイス唯一の専門メーカーである。Auguste L’Epée(オーギュスト・レペ) がブザンソン近郊で創業した1839年から現在に至るまで、L’Epéeの顕著な特徴は、全ての部分が手作りであることだ。
1850年以来、製造所は目覚まし時計、置時計、ミュージカルウォッチに特化したレギュレーターのメーカーとなり、「プラットフォーム」エスケープメント生産においてリーダーシップを発揮。1877年までに、年間24000点のプラットフォームエスケープメントを製造している。さらにこの時期、アンチノッキング、オートスタートそしてコンスタントフォースエスケープメントなど特殊なエスケープメントの特許を多数保有し、現在世に知られている多数の腕時計メーカーへのエスケープメントのサプライヤーでもあった。さらにL’Epéeは、国際展示会において数々の金賞を獲得している。
20世紀には、L’Epéeは最高級旅行用携帯時計でその評判を高め、多くの人にとってL’Epéeはときのセレブリティたちが所有する時計として名を馳せ、フランス政府関係者から上流階級ゲストへの贈与品としても選定されていた。 1976年にコンコルドが超音速航空機として商業就航した際には、L’Epéeの柱時計が客室の装備時計として採用されている。1994年には、L’Epéeはチャレンジ精神に突き動かされ、調整された振り子が付いた世界最大の時計Giant Regulator(ジャイアント・レギュレーター)を構築しました。 高さ2.2メートル、重さ1.2トン、機械式ムーブメントだけでも120キロの重さがあるこの時計製造には、2800人時の作業量を要している。
L’Epéeは現在、スイス、ジュラ山脈のドレモンに拠点を置き、CEOのアルノー・ニコラス主導のもと、洗練されたクラシックな旅行用時計、現代のデザインクロック(Le Duel)、およびアバンギャルドなミニマリスト時計(La Tour)ラインナップを含む、最高級置時計のコレクションを展開。 レトログラード・セコンド、パワーリザーブインジケーター、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、およびリピーター機構を含むコンプリケーションを特徴としており、すべてが社内でデザイン・製造されている。 超ロングパワーリザーブは、最高水準のクオリティとともにブランドのシグネチャーとなっている。